玄関扉の再生塗装 ボロボロの扉を素敵なアンティーク調扉に再生

玄関扉 再生前

とある戸建の玄関ドア、今回の案件となります。

紫外線を浴び続け激しく劣化し損傷してます。

玄関ドアの再生をしてほしいとの依頼を受けました。

お客様にいくつか施工方法を提案したところ、可能であればただ再生するのでなはく

味わいがありヴィンテージな感じでカッコ良く再生させてほしいとのこと。

味わいやカッコ良くとなると主観となり基準となり得る物差しが難しいところ

仕上がりがイメージと違うなど後々問題が生じてしまうことも考えられる

しかしながら作業上の自由度は高く、仕事のモチベーションは上がってきている

ヴィンテージやアンティークと問われ、真っ先に思い浮かんだのは

絶賛どハマり中NETFLIIX海外ドラマの舞台でもあるイギリス。

ロンドンの古い家が立ち並ぶ街並みで見かけるような扉のイメージを浮かばせて

当てはめてみる。

扉の色みが造作枠と調和していないように感じたので扉の色みを変えて調和させる。

古材のようなエイジングを施し、古びた風合いが様になるようにそれっぽくする。

仕上げに落ち着いた半艶くらいのクリア塗装を重ね重厚感のあるアンティーク調な仕上りに。

その旨をお客さまに提案をしたところ そちらでお願いします!

とのこと。

作業を開始することに

旧塗膜の剥離、剥離剤を厚塗りする

まずは扉の洗浄から。

旧塗膜を汚れと考えると、剥離剤は石鹸や洗剤。

旧塗膜の剥離に使用する剥離剤はミヤギのケストル

塗布すると表面に揮発制御膜を作り、浸透して旧塗膜を軟化させ膨張させる。旧塗膜が膨張、膨んだ結果、母材との間に隙間が生じ旧塗膜を浮き上がらせ剥離するというメカニズム。

ここで重要になるのが、塗布したケストルの厚み

厚み=重み=膨張力となる。

旧塗膜の密着力をケストルの膨張力が上回った結果、ケストルの重みで旧塗膜を吸い上げ剥離するということ。

なので扉にケストルを塗布し一定の厚みを持たせる為にコテを使い塗り広げていく。

ケストルはドロっとしたゼリー状なので、粘性があり垂直面でも厚みを持たせ塗布することができます。

垂直面に塗布する場合、必ず垂れてくるので

垂れ処理しながら下から上に塗布していくことがベターだと思う。

1時間後、厚みが足りなかったのか、剥離された表面が浮き上がり乾いた状態です。通常であればもう少し表面がドロっと濡れている状態だ理想だと思います。その後スクレーパやヤスリなどで塗膜の浮きを、剥がすも思ったより剥離できず。使用説明書にはその場合2回塗りと推奨されていたが、残りの塗膜は一気にサンダーで削ることに。

剥離剤の効果については、無くてもいけるが塗った方が容易には近づくと言ったところ。また突板の家具の塗り替えなどで旧塗膜は削れないけど、剥離しなくてはいけなくなったなどの場合はとても有効なのだろうなと感じました。

着色 色味をつける

扉に。全体的にムラっぽく仕上げたいのでところどころをステインを濃く塗り重ねエイジングを施す。

と勢いよく進めてきたのは良いものの、お客様の反応が気になり出しここまでの仕上がりを確認してもらうことに。現時点であれば、まだやり直しがきく…エイジングは要らないとかありそうだし

仕上がりの想像がちょっとつかないけど、仕上げを見て見たいのでこのまま進めてほしいとのこと。

仕上がりの方向性に一抹の不安を抱えていて、お客様の反応が確認できたことでホッとする。

モチベーションも上がりエイジングを施しながら塗り進めていく。

急ピッチでエイジングを施しながら両面を塗り上げましたがすっかり夜になってしまい、ここにて一旦作業終了。

中塗り 下地を整えて重厚感のある深い厚みを加える

後日塗りの作業開始

塗膜の厚みを利用し木地の凹凸を埋めて平滑にする

中塗りの作業。

サンディングシーラという肉厚のある透明の塗料を使用します。

今回は、さらに塗料の性質を利用して、中塗りを繰り返し中塗りのクリア層に厚み、深みを持たせる狙い。

⇨クリア塗膜の厚みでどっしりとした深みを表現する狙い

求めるのはド派手なテカテカの光沢ではなく、しっとりとして深い落ち着きのある光沢の艶。

速乾性のサンディングシーラーを使用したので、40分ほどで乾燥。サンディングシーラは乾燥後220番くらいからのペーパで簡単に削ることができます。

中塗り⇨乾燥⇨削りの行程を3回ほど繰り返し、木地の凸凹を埋め平滑へ近づけながら塗膜に厚みを加えていきます。

上塗り クリア塗装 

ここから本番であり本業でもある腕の見せ所

塗装の仕上げ、クリアー吹き付け作業。

全体をむらなく濡れてるように吹き付ける、決して垂らさないように。

使用するクリアは関西ペイントのレタンPG。

木部でもアルミでも使用してるクリアは基本レタンPG。以前は木部とアルミで使用するクリアは木部用などで種類を使い分けていたけど、仕事でお世話になっている家具屋さんから家具の塗装にはレタンPGが良いと聞いて以来、木部の仕上げにもレタンPGを共用しています。

僕が感じているレタンPGの特徴としては

  • まず他のクリアと比べて乾燥が早い
  • むらになりにくい、しっとりとした艶が単純に好みである
  • 艶消し剤や硬化剤の配合の計算が容易なこと

などが挙げれると思います

今回はしっとりとして落ち着いた艶を表現したいので

レタンPGクリアに艶消し剤を配合し半艶を狙います。

艶消し剤の割合はクリア100に対して90%から10%まで好みに配合できるのだけど、レタンPGの特徴として艶消し剤を配合する際に艶消し剤の分量に対して硬化剤やシンナーの割合を変えなくて良いところがあります。

扱う塗料はウレタン塗料なので主材クリアに硬化剤を配合しますが、レタンPGはあくまでも、主材100(艶消し剤も含む)に対して硬化剤は10 シンナーは40%から60%の使用となっているので、艶消し剤をどんなに入れようと配合は変わらず細かな計算に頭を使う手間が省けます。

レタンPGは車両用の塗料となる為、シンナーも速乾、標準 遅乾と3種類があり気温や湿度、季節により用途が分かれます。

シンナーの抜け、乾きが早すぎると表面がブツブツとしたゆず状の肌の仕上がりになってしまいます。

気温は26度、通常であれば遅乾のシンナーとなるが

僕が使っている塗装機は温風低圧塗装機になり

シンナーの抜け、乾きが早いです。

高圧よりミストが若干荒く粒子の乾燥も早い為。

その分ムラになりにくいというメリットもある…

なので少しでもシンナーの抜け乾きを遅らせる為に標準を使用。

主材クリアに100%対して艶消し剤70%

硬化剤10%、標準シンナー50%

さらに乾燥を遅らせる為に遅乾剤リターダーを主材に対して10%加える。

少なくともゆず肌だけはなんとか避けたい。

後は吹き付け方次第という考え方。

どんなに上手に吹きつけできていても、シンナーの割合で失敗してしまっていると、もともこもないので

シンナーの割合はクリア塗装の肝だとも思う。

クリア吹きつけ  カラーリング 吹き付けの流れ

塗料の配合が決まり、塗装の準備が整ったところで

吹きつけ作業の開始となります

合計で2回吹きつけします。

1回目はクリアに微量の着色剤を混ぜ最終的な色味をつけたします。

カラーリングと言います。

2回目は透明なクリアを吹きつけします。

吹き付ける前にガンスプレーを持って、あらかじめ自分が止まることが無くスムーズに動けるかなどをデモンストレーションします。

とにかく垂らさないこと。

を重点に置き吹き付けます。

まずは内側を吹きつけ、乾燥後に外側を吹き付けることにしました。

いきなりドバッとベタに吹き付けを始めると後々垂れてきてしまう要因となりえるので、最初は吐出量と圧を下げサラサラと全体を軽く吹きていきます。

全体的にサラサラと吹き終えた後は吐出量を70%くらいに設定して圧力を上げ、ベタにドバッと吹き付けをしていきます。扉とガンスプレーの距離はおよそ20センチくらいを目安にして調整してます。

上から下まで塗料を重ねて線のような動きで吹きつけていきます。

さらにムラを無くす為に範囲を上下に分けて吹きつけします。

この時に気をつけなくてはいけないことが動くスピードが一定であることと動きを止めないいこと。

ガンの運行速度が遅いとそれだけ吹きつけ量が多くなるので垂れてくる要因になり得る。

ただ夢中になっていると吹きつけてる瞬間から垂れてくることもあるのでここは神経を使うところ。

1回目の吹き付けを完了後に3時間ほど乾燥を待ち

さらにヒートガンを当て強制乾燥させ2回目のクリアを吹きつけました。

玄関扉 再生後

後日、扉の仕上がりの確認に。

エイジングと落ち着いた艶感が再現できていてお客様もご満悦の様子。

扉だけ高級になってしまったね笑とのこと。

ついでなので、汚れていた玄関の造作枠を余った塗料で塗り直しました。

玄関扉はお家の顔でありインテリアの一部でもあります。今回は完全なオリジナル。

家主の個性がチラリと光ります。

玄関扉の再生、塗り替えをご検討の方、ご相談下さい

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